保育園で検査を（切なる願い）

とある保育園に「RSウイルスが流行っています。RSウイルスは乳幼児にとってはインフルエンザよりも重症度の高いウイルスです。ご注意ください。」といった掲示物が貼られています。
これを見た保護者の方は、RSウイルスについてよほど見識のある方でなければ、「うちの子の風邪症状はもしかしたらRSウイルスかもしれない。検査しに病院に行こう」となりますよね。
何も知らなければ当然、そうなります。掲示内容も全く間違っていません。その通りです。
 
 
＜RSウイルス感染症の基礎知識＞
◉乳児に限った場合、季節性インフルエンザと比べると入院率、死亡率はRSウイルスの方が高い。
◉乳児初感染の場合は、7割が通常の感冒で終息するが、3割は急性細気管支炎を発症し重症化する。
◉RSウイルスは2歳までに必ず1回はかかる。それ以降も何回もかかる。
◉大人の風邪の原因の数％はRSウイルス（ただし基礎疾患のない健常な大人は軽症）。
◉インフルエンザの様な特別な薬や治療法はなく対処療法のみ。つまり、早く見つけても遅く見つけても治療に差はない。
◉マスクは無効（2歳未満はマスク禁止）
◉0歳児でなければ、RSウイルスの検査は、保険適応外
 
 
八千代市の登園届（保護者記入）には、「細気管支炎(RS・ヒトメタニューモ等)：呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」との項目があります。
これを元に、保育園の先生はRSの検査をしてきてくださいと親御さんに指示をします。
保育園の立場からすると、園内で流行は困るので検査したい気持ちはわかります。
しかし、医療者の立場からすると、治療もないのにRSウイルスの検査って本当に必要なのか、すごく疑問です。確かに流行している原因を探るのは非常に重要ですが、全員検査すべきものでしょうか？　RS抗原検査は、1歳以上は保険適応外なので病院持ち出しになります。気軽に検査できませんのでどうか勘弁してください。一応、当院では急性細気管支炎を発症している場合や、発熱が4日以上続いている場合などに絞って検査を行なっております。
園の方から検査しないと登園できないなどのあまりにも理不尽な検査希望が多くなれば、有償（自費）で検査もやむなしと考えています。
乱暴な言い方をあえてするとすれば、いずれ感染するウイルスなのだから園のお友達からもらってくるのは当然のこととして、完全な隔離は無理なのだから感染は仕方がない。むしろ、重症化したお子さんを早く見つけることが重要なのであって、初感染7割が通常の風邪で終わるウイルスを、重症化もしていない状況下で検査することは医療経済的に本当に無駄と考えています。
そこで解決策として提案です。
保育園で検査キットを購入し、自前で検査するというのはいかがでしょうか？
コロナがきっかけで自宅で抗原検査ももはや当たり前の時代ですので、園の関係者の方々には是非、園での検査をお願いしたい。
医療費が年々高騰するのをほんのちょっと抑制できるのではないでしょうか。